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暁闇
第3章 そして出会った彼女
「……じゃ、またあとでね」
桜井が俺に小さく手を振る。
ああ、と答えると、先輩は微笑んで桜井の背中に手を回し、ふたりは坂本たちのいる方へと歩いていった。
「琴音ー! 先輩ー!」
より、そこが賑やかになる。
坂本は笑顔で桜井に抱きつき、先輩を見上げて何か話していた。
先輩が苦笑しながら何度も頷いている。
俺はそこから目を逸らし、手の中のグラスの酒をぐいっとあおった。
……幸せそうだったな。
ふ、と息を吐いて。
桜井を想う。
何年も、抱いてきたこの感情。
もう望みがないとわかってからも、いまだ自分の中から消えようとはしてくれない。
『新しい恋が一番だよ』
前に坂本に言われた言葉。
もっともだとは思う。
けれど、どうすれば他の人に目がいくようになるんだろう。
どうすれば桜井以外を好きになれるんだろう。
思わず、溜め息をついた。