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暁闇
第17章 交わすたび、深まって
「……あおいさん」
俯いて黙り込んだ私に、声が掛けられる。
そっと顔を上げると、翔悟くんと目が合って。
私のその濡れた目元を、指先で拭いながら彼は言った。
「俺、もう待たないから」
真っ直ぐに、私を見て。
「あおいさんの気持ち、俺にあるって分かったから……だからもう待たない」
「……っ、でも」
なおも躊躇う私に、翔悟くんは
「あおいさんが罪悪感感じる必要なんかないです」
そう、言い切る。
「……どうして……」
私の話、聞いてくれたのなら――――。
「きっと誰もあおいさんのこと、責めたりなんかしてない」
「……え」
翔悟くんは、真面目な顔をして。
私の髪を、指先ですっと撫でる。
その動きを目で追ったかと思うと、不意に視線を合わせられて。
思わずどきり……とした私の心臓。
たまらず、俯いて逸らした。
「前、丈が言ってたんだ」
そんな私に、翔悟くんは突然弟の名前を出す。
「夏休み、ここに泊まりに来たとき。
そのときの俺、前にあおいさんから聞いた程度しか事情知らなかったけど。
それでもあいつ、そのことに少し触れて。毎日仕事と家事と、丈の世話ばかりだっていうあおいさんの心配してて。
……もう自分のことだけ考えて自分の幸せのために生きればいいのに、って」
その言葉に静かに顔を上げると、翔悟くんと目が合った。