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暁闇
第3章 そして出会った彼女
「あ! 何笑ってるんですか~?」
下を向いていたのに気づかれて。
まずい、と思ったそのとき。
「和美、絡まないの」
あおいさんと呼ばれたその人が助け船を出してくれた。
「え~。絡んでないもん」
「それ絡んでるって言うの」
だって~、と。
拗ねたようにその人はまた話し出したけれど。
「もう。分かったから、ね?
……ほら。写真撮るんでしょ? 行こ?」
彼女に手を取られ、渋々ながらおとなしくなる。
「……ごめんなさい、じゃあ」
彼女はなんだか申し訳なさそうな顔をして頭を下げ、その人を連れて離れていった。
「あ、いえ……全然」
俺の言葉は聞こえたのか聞こえてないのか、あとはもうこっちを振り返ることもなく。
会場の真ん中にいる先輩と桜井のもとへとふたりは歩いて行く。
その、彼女の後ろ姿を見ながら
――あのとき、俺に何か言い掛けてたけど。
何だったんだろう。
少し気になりつつも。
でもわざわざ聞きに行くようなことでもないだろうし、とそう判断して、俺も坂本たちの方へと向かったのだった。