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暁闇
第18章 繋いだ手
やがて、奥の方から聞こえ始めた話し声。
何かの映画の上映が終わったのだろう。
見終わった人たちがロビーへと歩いてくる。
「あ」
そして不意に翔悟くんが発した呟き。
それと同時に手を引かれて。
歩き出した彼に、私も着いていく。
「丈」
――――え?
翔悟くんが弟の名前を呼んだ。
え? え? と戸惑いながら彼の視線の先を見る――――。
「翔悟さん!」
「あ、お姉さんっ」
そこにいるふたりが同時に言葉を。
「丈……結ちゃんも」
彼らの名前が、思わず口から出た。
「――――あ!」
結ちゃんのあげた声。
指を指したその先にあるのは。
はっ、として。
繋がれていた手を、解こうとする。
けれど、翔悟くんはそうさせてはくれなかった。
「もしかして……もしかしたんですかあ!?」
きゃあ! とはしゃいだ声で。
弟の服の裾を引っ張って、笑顔を彼へと向けた。