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暁闇
第18章 繋いだ手
映画館に着く。
上映時間まではまだ少し時間があった。
翔悟くんがチケットを買ってくれて。
じゃあ私はドリンクでも買おうと、
「飲み物、何がいい?」
そう、彼に聞いた。
「ん。ちょっと待って?」
なのに翔悟くんはそう答えて、また私の手を握る。
「少し、このまま」
「……うん」
ロビーの端の方に寄り、そのまま話す。
それは映画のことだったり。
そのあとどうする? といったような内容だったり。
……今までだって、そんな話は普通にしてた。
でも、手を繋いでいる――――ただそれだけのことが、今までとはまるで違う気持ちにさせてくれるのが本当に不思議で。
触れ合う、って。
特別な行為なんだな……そんなふうに思いながら、翔悟くんを見つめた。
そして。
ん? と優しく見つめ返してもらえる幸せ。
嬉しさに、きゅんとして。
首を振って俯く。
――この幸せって、いつまで続くのかな。
まるで終わることを前提にした考えが急に浮かび、少し、幸せな感情の邪魔をした。