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暁闇
第4章 ふたりの想い
「……え?」
話が飲み込めない俺は、そんな呟きでしか返せない。
「会場での様子。ほかの人たちとなんだか違ってたから……」
「それは――――」
「琴音さん、村上さんを見て泣いてるし。
桜井くんも、少し態度が」
俺は、思わず黙り込む。
……そしてそれに気づいた。
「――同じ立場、って」
ほとんどそれを認めたようなその発言を口にし、彼女に視線を送ると。
「……私、桜井くんが好きだったんです」
ふふ、と口元にだけ笑みを浮かべ、彼女はそう言った。
「村上さんも、琴音さんのこと――そう思って、つい。
……もし違ってたらごめんなさい」
静かに頭を下げる。
「あ……いえ」
なぜか、誤魔化すことができなかった。
彼女の口調が、茶化すような軽いものではなかったからかもしれない。