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暁闇
第20章 ほどけて
「お母さん今は幸せだって。
離婚したの後悔してないって。
きっとお父さんもそうだ、って」
「あおいさん……」
「お父さんとの結婚はうまくいかなかったけど、それも後悔してないって。
……私と丈の母親になれたから……そう言ってた」
彼女が、俺を見る。
「ふたりには幸せになってほしいって」
その左手が、床に投げ出すようにしていた俺の右手に触れる。
「私と丈が幸せでいることが、お母さんの一番の幸せだから、って――――」
……その言葉にたまらなくなった俺は、彼女に向き合って。
空いている左腕で、そのまま彼女を抱き寄せる。
胸元に当たる彼女の頭部。
愛おしむように、手と唇を寄せた。
あおいさんは黙ってされるがままでいて。
けれども、繋いだ手には……きゅっ、と力が込められた。