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暁闇
第5章 終わらせる決意
「村上さん?」
不意に掛けられた言葉に、はっと我に返った。
しばらく黙り込んだままだった自分に気づく。
「……すいません」
「大丈夫ですか?」
「はい」
つい、いろいろ思い出してて――――そう続けた俺に、松下さんは言う。
「村上さんは、琴音さんとの時間、たくさんあったんですもんね。
……無理もないです」
笑おうとしたけれど、それはただ口元を歪ませただけに過ぎず。
思わず髪を両手でかきあげ、そのまま小さく息を吐いた。
「私なんて、2年にも満たないです」
「え?」
「桜井くんのこと、好きになってから……今まで」
「……長さじゃないと思いますけど」
俺の言葉に、彼女は微かに微笑んだ。
「桜井くんとは同期で。
でも最初はほんと、ただの同僚のひとりだったんです」
そうして、話し始める。
俺が話したように、その出会いを。