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暁闇
第5章 終わらせる決意
……けれど。
桜井は俺を選ばなかった。
選んだのは、その男だった。
それが事実で。
そうである以上、俺はその関係には踏み込めない。
ただ、友達としてそばにいた。
それからもずっと。
時折見せるかげりのある表情に、声をかけたことも何度かある。
桜井はいつも『何でもないよ』と答えた。
……何でもなかったらそんな顔しないだろ?
そう思っただけで、あとは何も言えなかった。
1学年上のそいつの卒業と共に、桜井たちの関係は終わったと知った新学期。
『付き合うとかなんだか難しいね。
しばらくはもうひとりでいいな』
そんなふうに桜井は言った。
でも、一時期見せていた苦しそうな表情をしなくなり、やっぱり桜井にとってあの男との関係は楽しいものではなかったのだと確信した。
それからもずっとそばにいた。
誰に告られても、桜井はもうそれを受け入れようとはしなかった。
俺はそんな桜井に正直安心し、友達の位置で彼女の近くに居続けたんだ――――。