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暁闇
第5章 終わらせる決意
意識なんかしていなくても、桜井は本当はずっと先輩を想っていたのだと、俺は彼女の前の彼氏を思い出したときに分かった。
なんとなく、先輩に雰囲気が似ていたその男。
だからこそ、桜井は彼に惹かれたのだ。
俺がだめだったわけじゃなく。
桜井には最初から先輩しかいなかったのだと。
……分かってしまったけど。
でも、俺にもチャンスはまだある、ってそんなふうに思えたぐらい、そのときの彼女の心は確かに揺れてたに違いなかったんだ。
――けれど。
「……結局、だめでしたけどね」
「村上さん……」
「はっきりと、先輩じゃないとだめって言われて。
どうしたらいいのかわからないけど、どうしようもなく先輩が好きだと泣かれてしまって」
ははっ、と。
乾いた笑いが、勝手に自分の口から発せられた。
「……桜井も、先輩も。松下さんさえ、俺のこといい人って言うけど……ほんと違うんですよ」
いつの間にか、またグラスは空になっている。
オーダーして、これで何杯目だっけ……となんとなく考えて。
でも思い出せないまま、出されたそれをぐいっとあおった。