この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁闇
第5章 終わらせる決意
「……背中、押したわけじゃない」
ぼつりと、呟くように俺は口にする。
「桜井が振られればいいって、ほんとに俺……思ってた。先輩が、拒絶してくれればいいって。
そして、もう先輩を諦めざるを得ないように……そんなふうにあいつを追いつめたかった」
「村上さん……」
「想いを終わらせなきゃ、先になんて進めない。はっきり、だめならだめって分かった方がいいんだ。でなきゃ他に目を向けることもできない
……曖昧な状態なんて絶対苦しすぎる」
そんなつらい想い……桜井にもうさせたくなかった。
俺にしがみつくようにして、泣いた彼女。
身動きが取れないほどのその想いに、どうしたらいいのかわからなくなっていて。
もう、見ていられなかった。
桜井が言えないなら俺が代わりに言う。
そして桜井の想いを受け入れてもらえなかったそのときは、もう一度。
……もう一度、桜井を俺のこの腕に。
そのときは絶対離さない。
――そう、思っていたんだ。