この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁闇
第5章 終わらせる決意
「……俺、頑張りましたよね」
少し調子に乗って彼女に聞くと、松下さんは少し驚いたような顔をしながらも、優しく笑ってくれた。
「はい」
「……うわ」
肯定された途端、なんだか急に恥ずかしくなって。
タイミングよく出された酒を飲むために、彼女から目を逸らしたそのとき。
「……頑張りました」
その一言が。
無防備になっていた俺の心に、なんだかすごく響いて。
チン……と小さく音を立てて触れ合わせられたグラス。
綺麗な、その音。
「……松下さん」
俺は手元のグラスを見つめながら、彼女の名を呼んだ。
はい、と小さく返事が聞こえ、俺は視線を彼女へと移す。
「話聞いてくれて、本当に感謝してます。
俺も、いつでも松下さんの話聞くんで」
「村上さん……」
そして、今更ながら気づく。
「俺のこと、さんづけじゃなくていいですから。
呼び捨てとかで。こっち年下なんだし」
「あ……はい」
そして、少し考えて。
「じゃあ、村上……くん」
「はい」
「そのときは、お願いします」
「……はい」
顔を見合わせて、微笑み合う。