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BAR・エロス
第14章 今夜の相手は・・

重いドアがより一層重く感じる。


2週間前のあの夜が、頭の中をチラついて・・

店の前で一瞬足は止まった。
どんな顔で紫苑と会えばいいのか、
恥ずかしい気持ちが
心臓の鼓動をいつもの倍にしている感じがする。


どうしよう・・

迷う気持ちはあっても
このまま帰ろうという気はなかった。


もう私は
BAR・エロスから逃れることはできない。

そう覚悟を決めて、
やっとの思いで取っ手に手をかけた。



両手でドアを引くと
光の中に紫苑の姿が見えた。

私に気がつくとすぐに
ドアまで出迎えに来てくれた。


「いらっしゃいませ。お待ちしてましたよ。
 先週いらっしゃらなかったから・・
 ちょっと心配しちゃった・・」


やはり一線を越えると態度も変わる。

いくら面接、なんていう
不思議なセックスだったとはいえ、
互いをさらけ出しあったのだから
特別な想いが芽生えても、なんらおかしなことはない。


私をエスコートして
いつもの位置に座らせる。

客は他にもいた。

男が5人と女が3人。

こんなに多くの客がいるのを見たのは初めて。
そのうち2組が
カウンター越しに
交渉をはじめているようだ。


「いつもより遅い時間だものね、こんなに 
 人がいるのは初めてでしょう」


「ええ。なんだかその辺のバーとちっとも変わらない。
 ほんとに・・不思議な店ね」


客を見回し安心のため息を吐き出す。
私もこの店の中のその他大勢・・


「お飲み物は?いつものやつ?」


手元にあるフォアロゼの瓶に手をかけながら
一応、という感じで聞いてきた。


「いいえ・・さて私は今、
 何を飲みたいと思っているでしょう?」


クイズなの?と笑いながら紫苑は天井を仰ぎ見る。

いつも心の中を見透かされている悔しさを
なんとかはらしてやりたいと少しからかってみたのだ。

それと、彼に特殊な能力なんて本当は無いんだ、と
確認したくもあったから。


「う~ん、そうだな・・
 カクテル、かな。カルアミルク?」


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