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BAR・エロス
第16章 揺れる心・・
家のドアを開けた時、
誰もいない部屋にむかって
ただいま、と声をかける。
昨夜のやりとりがよみがえってくる。
久しぶりのおかえりとただいま・・
買ってきたコンビニ弁当を
レンジに入れたまま
ベッドにごろんと寝転がる。
そして思い出す。
あの時の紫苑、そして自分・・
特別な表情を見せあった・・
そういえば・・
修には見せたことのない顔。
彼をおかえりと迎えることはできない。
私がただいまの言葉を聞くこともない。
そう、彼はよその旦那なのだから。
もしも私の家に連れ込むようにでもなってしまったら・・
それこそ帰らないでと
彼に泣きすがるかもしれない。
奥さんと別れて私と一緒になって・・と叫びだすかもしれない。
修に対する気持ちが
あの10回目の夜を境に膨らんだことに気づいた今となっては
彼を家に誘う事は決してできない。
でも紫苑なら・・
彼はシングルだ。
誰に遠慮することもない。
修にはできないことを
紫苑とはできる。
しかし修の代理のような気持ちで接すれば、
紫苑を傷つけた年上の女と
同じ仕打ちをしてしまうことになりかねない。
いや、そんなことはしない。
絶対しない。
そう言い切れるほど、
私の中で紫苑もまた、大切な存在に
なってしまったのだから。
修と紫苑。
彼らはもう
セックスだけの相手ではなくなってしまった。
単純な気持ちで抱き合うだけ、というわけには
いかなくなってしまった・・
もう・・
恋なんてすることはないだろう・・
そう言い含めていた心が
ゆらゆらと揺れだしてしまったことは・・
これからの私の人生の
転機がここで訪れたという事かもしれない。
もう50・・
まだ50・・
女としての幸せを
まだまだ味わおうと思えば
できないことはないんだ。
この2つの芽をふいた恋らしきものを、
素直に恋だと認めて
飛び込んでみようか。
私が失うものは
何もないのだから・・