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BAR・エロス
第18章 私の中・・


3日の間に2度もこの部屋のドアに
鍵を差し込むことになるとは、自分でも少し驚いている。

相変わらずのすっきりとした部屋の中で
のんびりとくつろいで紫苑を待つ。

今日は化粧道具も持っている。
替えの下着も持っている。
実は今夜ももしかしたらこういう事になるかもしれないと
期待してちゃっかりと準備はしてきたのである。

あれこれ理屈や言い訳を並べる割には
調子の良い事を考えているのだから、
私という女もかなり図々しい。


さっそくシャワーを浴びようとバスルームに入ると
この前と同じように
タオルとローブが用意されていた。


汗を流し髪を乾かし、
前回と同じように下着を着けずにバスローブを羽織る。

キッチンの食器棚を開けたり冷蔵庫を開ける感覚は、
もうすっかり自分の家同様に自然になっている。

冷蔵庫の中に
今度は栓を開けたばかりの赤ワインがあった。
今夜は瓶ごとロ-テーブルに持っていく。

ちらりと窓の外に目をやると
少し灯りの少ない街並みが
静かにたたずんでいた。


テーブルに肘をつき
妖しく見える赤い液体を見つめながら、考えた。

もしもエロスのママになったら、
私もこの街に暮らすことになるのだろうか、と。
自宅マンションは湯島。
店が終わるころには終電も過ぎた後。
やはり歩いて帰れる近場に住まなければならないだろう。
でも・・
六本木なんて家賃いくらだよ?
もしこっちへ部屋を借りたら自宅はどうする?
まさか終電に間に合うように仕事を切り上げるなんてこと、
ママの立場でできるんだろうか?

そうやってひとつずつ冷静に考えてみると、
簡単な転職ではないことはよくわかる。
ママは、負担を強いるような働き方はさせないと言ってくれた。
こういう事もひっくるめて
相談してもいいという事だろうか。

もっと重要なのは、
私にバーのママという仕事が務まるのだろうか、ということ。
お給料だってもらうわけだし、客商売だし、
なんといってもこんなに特徴のある店を、
私のような素人に守っていけるのだろうか・・

そしてもう一つの気がかり。
それは・・

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