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BAR・エロス
第20章 きっと守が・・
竹内から誘いの電話をもらったのは
修とのあの夜から
2日経った夜だった。
クリスマス直前の土曜の銀座。
少し早い夕方5時。
あの宝石店の、今度は
ツリーの前での待ち合わせた。
きらびやかな光の粒を背にして竹内の姿を探す。
しばらくして、
幾重にもかさなった雑踏の中に
彼の姿を見つけた。
私を確認すると小走りになる。
近づいてきたその顔が
だらしなくほころんでいるのを見て、
なんだか女子高生に戻った気分で
胸の前で小さく手を振った。
自分たちの話し声もかき消される瞬間があるほど、
ビアホールは明るい騒がしさにあふれている。
もうじき終わる今年1年を前に
人々の勢いは止まらない。
それは私たちも同じこと。
高らかに笑い、豪快に食べた。
その店を出てから竹内が連れて行ってくれたのは、
私にとっては初めての銀座のバー。
地下に伸びる細い階段を下り、
エロスの扉とはまた違った重厚感のある扉を開ける。
さえずるような
品のよいトーンで話をしている客達と
アンティークの家具に目を奪われ、
私は久しぶりに緊張した。
年代物と思われるソファへと腰を下ろすと
背筋を伸ばしながらもほっとさせられるような
おだやかな空気を感じた。
「今夜の梓の雰囲気にぴったりじゃない?」
竹内はブランデーのグラスを手で包む。
「そう?今夜の私はそんなにイイ女かしら?」
私は相変わらずのフォアロゼを口に含む。
「落ち着いて話しがしたいんじゃないかって、
なんとなくだけどそう思ったんだ」
またもや見破られた。
彼の言うとおり、私は竹内に
話を聞いてもらいたかったのだ。
「どうしてこうすぐに読まれちゃうのかしらね、私って。
そうよ、服を脱ぐ前に
聞いてみたい事があるの」
息を漏らして笑った竹内の表情が愛らしかった。
私は顔を寄せ声をひそめた。
「何人もの男と一人の女の体を共有するって
守はどう思う?」
口に運びかけたブランデーグラスは
中途半端な位置で止まった。
動きを止め、瞬きせずに私の顔を見つめる竹内は、
次第に頬を緩ませていった。