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BAR・エロス
第22章 決意・・
街が年明けの浮かれ気分から落ち着きを取り戻してすぐ、
私は幸子ママに会うために
エロスを訪れた。
もちろん、返事をするために。
相変わらずの重い扉を引くと
棚に酒を並べている紫苑と
カウンターの真ん中で
グラスを並べているママが
同時に振り向いた。
「こんばんは。
今夜は返事をしに来ました」
その声音に
吉報だと確信したであろうママは
「さあこちらへ、どうぞ座って」
自身も弾むような声で
私をソファ席へと促した。
紫苑もその手を止めて
私たちのもとへとやってきた。
座るとさっそく、口を開く。
「やってみようと思います。
エロスのママを。
うまくできるかどうか、いえ、
本当にできるのかどうかもわかりませんが、
これもなにかの縁だと思って。
それと私自身を試すためにも。
不束者ですが、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げると
膝の上の私の手を
ママは両手で包み込んだ。
「ありがとう、篠原さん。
エロスと、そして紫苑を・・
よろしくお願いします」
ママも
深く深く頭を下げた。
隣りに立つ紫苑も同じように頭を下げる。
それを見て私もまた頭を下げる。
しばらく互いの表情の見えないまま
静かな喜びに浸った。
その雰囲気に照れくさくなってきた
私が口火を切る。
「今は契約社員なので
3月末までは契約通り仕事を続けます。
だから4月からという事になりますが、
ひとつお願いがあるのですが」
「ええ、遠慮なく言ってちょうだい」
「4月まで週に1度、
バイトさせてもらえませんか」