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BAR・エロス
第22章 決意・・
ママと紫苑は顔を見合わせる。
ママにはもちろんだが、
紫苑にもここまで黙っていた。
言ったら彼はどんな顔をするだろう・・
それを見るのを半ば楽しみにしていたのだ。
期待通りの表情を見せてくれた。
嬉しそうに頬を緩める紫苑が私を見つめる。
なんだか少し
涙腺が刺激された。
「もちろんよ!でも大変じゃないの?
体だけは無理させないように・・」
「はい、なので休日の前の夜なら」
終電に間に合わなければ
紫苑の部屋に転がり込めばいい・・
勝手にもくろんでいるが、
きっと紫苑も同じことを考えているだろう。
そっと彼に目を向けると
無言で頷いた。
「そこまでしてくれるなんて、さすが梓さん。
どう?ママ。
僕の眼に狂いはなかったでしょう?」
得意満面でママの顔を覗き込む紫苑の手を、
ママは握って揺さぶった。
「これで・・
また1人家族が増えたわ・・」
うっすらとつぶやいたママの言葉は
私の耳にしっかりと残った。
似た者同士の赤の他人が
ひとつ屋根の下で力を合わせて前に進む。
本当の家族を持てなかったママと紫苑が、
こうして寄り添いながら
エロスというバーを守っている。
そこに私が加わる。
みな同じ思いをしているからこそ持てる
思いやりや愛情。
私もこの二人にとびきりの愛情をそそぎ、
そして支え合っていこう・・
ママの言葉になぜだか号泣した私を
笑い飛ばす紫苑の声は、
店の外まで聞こえそうだ。
まるでその笑い声につられるかのように
まず1人目の客が入ってくると
立て続けに客がドアを開ける。
店は一気に
いつも通りの落ち着きと妖しさを取り戻した。
BAR・エロス・・
なんて不思議な店と出会ったのだろう・・
愛欲と、そして
家族愛を
この私にもたらした。
本当の目的は・・
これだったのかもしれない・・