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BAR・エロス
第1章 はじまり・・


スツールって本当に座りにくい。
どちらかというと小柄な私は
よじ登るようにしてでないと座ることができない。
どの店に行っても
どのスツールに座る時も体がギクシャクする。

中途半端な斜めになったままの椅子を
どうにか位置を変えようと
座ったまま体を揺すっていると、
バーテンが私ごと抱えて動かした。
私の胸元に彼の顔がめいっぱい寄った。


「あ、ありがとう・・」


すこし上ずった声でお礼を言うと、
ものすごく近いところでどういたしまして・・と聞こえた。

私の左の耳元・・え?いま・・
唇ふれたんじゃない?耳たぶに・・

途端に体が熱りだす。
更年期も手伝って、額から背中から
だらだらと汗が流れる。

もう頭の中は
すっかり妄想にやられている。

・・このバーテンが私の体を抱え上げて・・

奥に見えたソファの上に押し倒し・・


「お飲み物は何にいたしましょう?」


いつの間にかその声には距離ができていた。
バーテンはカウンターの内側から声をかける。
洗い終えたグラスを布巾で丁寧に拭きながら
私の注文を待っている。


「フォアロゼをロックで」


かしこまりました、と
びっしりと酒瓶が並ぶ棚まで
バーテンは酒を取りに行く。

この店・・ホント想像以上に広いな・・

こちらのカウンターには椅子が20脚。
向かい側もこちらと同じなら
合わせて40脚。

そんなに客が来るのだろうか?

そして左の奥の方。
2人がけのテーブル席が2つ、そして
大きめのソファ席が3つある。

そのスペースは、店のドアを開けた時にはわからなかった。
見えなかった。
ここに座ってはじめて見えたのだ。

まるで・・秘密の場所みたい・・




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