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LEMON DEPENDENCE
第8章 確かな壁
「檸檬が初めてだ。俺にそういう事自覚させてくれたのは」

「……」

「俺ってさ、自分で言うのもアレだけど…結構甘やかされて育ったし、けっこう自分本位なところがあるって自覚はしてた。でも、自覚はしてても言ってもらえないと気付けねーんだ。…今までは誰も言ってくれる人がいなかった…檸檬、俺。檸檬が居なかったらものすごく嫌な大人になってたかも」

「そ、それは良かったですね…」



興奮気味にきらきらと目を輝かせる矢野くん。

そんな姿を見て、私は不覚にも…


―――矢野くんにはマゾの気がある。


と、思ってしまった。

ごめんよ、矢野くん。


―――――


「え…私の家族に会いたい?」

「ちゃんとお付き合いしてるって話したい」

「……それってまず私が先に、矢野くんのご両親の元にうかがうべきじゃないですか?」

「…そうかも。ああ、でも親父に檸檬を会わせたくない」

「何故?」

「困るだろ?親父が檸檬に惚れたら」



矢野くん…

それはないでしょう!?



「…無駄な心配ご苦労様」

「あと、お袋にも会わせたくない」

「…一応聞くけど、何故?」

「お袋はさ…二言目が「財産目的なんでしょう!?」って言い出す被害妄想の激しい奴で」

「それだけ家族を守ろうという意志の強い方なのでしょう?」

「…そっかな」



矢野くんは遠い目をして、笑った。

なんだか矢野くんの家は、矢野くんの家で複雑そうだ。



「俺、檸檬の家族の事知りたい…こんな素敵な子を育てた親御さんってどんな人か気になるし」

「…まあ、いずれお話ししましょう」

「今、話してくんないの?」

「……この幸せな空気をぶち壊したくないので、また気分が向いた時にお話しします」

「…わかった」



ごめんなさい矢野くん。

今日くらいは一日幸せでいたいから…
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