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銀剣士の憂鬱
第17章 本当の姿

(サラは優しいから...
私の身に起こったことなど気にしなければいいのに。
あんなのサラに会えないことに比べれば対したことなかった。
優しいサラはこの先もずっと忘れないんだろうな。)
森の中の大きな湖の前でチェチェは座り込んでいた。
その湖はどことなく故郷の湖に似ていた。
湖に写る自分の姿を見つめる。
(人間の男になったところで、その姿も今のこの姿も本当の姿じゃない。
それで、本当にサラを幸せにできるのだろうか。
人間の男か女かなんて。
そんな問題でもないのに...)
やがて、辺りが暗くなっていき、その一方で空の一部がほんのり明るくなってきた。
その日は満月だった。
満月は湖の端にもその姿を示した。
「そうか...
忘れてた。今日は満月だったのか。」
チェチェは自分の身体に魔力が満ちてくるのを感じた。
「この魔力を使って、久々に元の姿にでも戻るか。」
チェチェは立ち上がると、力を込めた。
髪が逆立っていき、その影は形を変えていった。

