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Blindfold
第12章 風
力の入っていた店長が、脱力するのが分かった。
私は、はぁ…と息を洩らして、後ろを振り返る。
呆然としているかずにぃは、未だその純粋な瞳を揺らしながら、私のことを見つめた。
「桜っ……お前……っ」
かずにぃ…
私が恋い焦がれて止まなかった、私の大切な人───
「……鈍感すぎ」
「っ……俺はっ……」
ワナワナと震えている。
かずにぃ。
悪気はなかったんでしょ…?
でもね
それがずっと私には辛かった。
ずっと…
ずっと…
「ずっと…好きだったよ」
「さくらっ……」
こういう時は、迷いなく、私の名前呼んでくれるんだね。
思わず、ため息のような笑いがこぼれた。
「いい加減…卒業するね」
「────…っ」
もう、この苦しいだけの恋とはおさらばだ。
「お姉ちゃんと、お幸せに」
「……気付かなくてっ……俺はっ…」
「さよなら……」
かずにぃに背を向けた。
背後で、ごめん…という声が微かに聞こえた。