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Blindfold
第18章 Blindfold
「まぁ抱くのは閉店後にするとして……」
そんなこと言われたら、勤務中気が気じゃない。
きっとそれを分かって店長はわざとそう言っている。
本当に嫌な性格だ。
「準備すっか」
うーっと伸びた彼を見て、コクリと頷く。
そんな私を店長は横目で見ていた。
「わっ……」
突然肩を引き付けられてよろける。
店長は、そのままタバコを手に持ち、素早く私に顔を近付けると、チュっと音を立てて口付けた。
「─────っ…」
「……おし、始めるぞ」
赤面している私をよそにまるで何もなかったかのようにして、店長が店に入っていく。
「…………ばかっ…心臓保たないじゃん…っ」
聞こえないようにそう呟いて一人で照れを隠す。
完全に彼のペースに飲まれている。
でもそれは嫌じゃない。
店内に入ろうとして、扉の前で足を止めた。
そして、看板に書かれた店名を目で追う。
「……Blindfold」
小さく声に出すと、思わず口元が綻んだ。
それは、私の居場所。
「桜、早く来い」
彼に呼ばれて、返事をした。
店先の花壇のリナリアが微笑むように咲き乱れる。
そして、私もリナリアと同じように微笑みながら、彼の待つ店の中へと駆けて行った。
『Blindfold』【完】