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余熱
第9章 忘れる

「…会いたい…っ!」

泣きながら、声を震わせながら、そう答える葉月。

愛しさが胸を突き上げる。

それと同時に、背筋を伝って脳天へと駆け上る強烈な欲望。

「…じゃあ、下まで降りてきて。」

そう言うと、彼女は拍子抜けした声で驚く。

「実は、もうマンションの前まで来てるんだ。」

確信はしていなかったが、そう言ってみた。

そして目の前にそびえ立つマンションを見上げる。

カーテンが少し動いて、すぐに元に戻ったかと思うと、電気がふっと消えた部屋があった。

おそらく彼女の部屋だろう。

車にもたれかかり、夏の夜空を見上げながら思う。

やっと見つけた、車を駐める脇道の前にあったのが、彼女の住むマンション。

こんな偶然、あるか?

いや、もはや運命と言ってもいい。

そんなロマンチックなことを考えてしまっている自分が気持ち悪い。

彼女との出会い、関係や想いの深まり方、抱く感情の一つ一つ、

何もかも、今まで俺が経験し信じてきた“普通”を逸脱しているーー。

そんなことを思っているうちに、彼女がエントランスから出てきた。

そして、俺の胸に飛び込んでくる。

じわり、と僅かに濡れるワイシャツ。

今にもほろほろと崩れてしまいそうな彼女の風情。

俺は彼女の腰を引き寄せる。

ふわりとなびく栗色の髪。

かすかに鼻先を掠める彼女の香り。

克明に覚えていた。

彼女を忘れることなど、全くできていなかった。

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