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HOTEL・LOVE
第19章 それぞれが見上げた空
季節が一巡し、初夏の香りが漂い始めた頃、
香澄は無事に出産を終えた。
2800グラムの元気な男の子。
目のあたりが亮太の小さい頃にそっくりだ、と
義母は眼を細めて孫の顔を覗き込んでいた。
「よくがんばったな、ありがとな、香澄」
頬を撫でてくれる亮太の手を自分の手で包んだ。
大切な手。
これからずっとこの手の中で、幸せに暮らしていくんだ。
私と、この子と、そして亮太と。
生まれたばかりの小さな手をそっと包む父親の大きな手。
眺めているだけで幸せな気持ちがあふれていった。
ふと、窓に目がいった。
病室の窓から見える空が青く眩しく、
その色の深さが
新しい家族の誕生を祝福しているように見えた。