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HOTEL・LOVE
第11章 求める理由
駅までの道すがら、晴樹は黙って
前だけを見続けた。
その横顔を見上げる香澄には、
言葉なんか見つからないよ、と
諦めの呼吸しかできなかった。
駅の手前、
居酒屋が立ち並ぶあたりまで来た時、
香澄は立ち止り、
晴樹のシャツの袖を引っ張った。
やっと香澄の方に顔を向けた。
「ちょっと・・寄ってこうか」
晴樹と目を合わせてから、
赤い大きな提灯に視線を移す。
焼き鳥を焼く煙と騒々しい野太い声が渦巻く
一杯飲み屋。
静かな個室の居酒屋でもいいよ、と
香澄は付け加える。
好みで言えば
静かな個室の方がいいけれど、
壁一枚隔てた隣で
誰が話を聞いているかわからない・・
さっきの自分のように、
今度は誰かが
自分を陰から見ているかも・・
ちょっとうるさそうだけど、
かえって自分たちの話を
他人に聞かれる心配は低そうだ。
それに香澄と2人で酒を飲んでいるところと見られても
何もやましい事はないし。