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悪戯な思春期
第3章 王子様の刺客は忍者
「なにしてんのお前?」
「……んでもねぇよ」
俺は机に突っ伏したまま返事をする。
今は五限が終わった直後だ。
冷たい机に頬を押しつけ、無気力感をぼんやり味わっているのには訳がある。
(……椎名)
「なぁ、雅樹? 次の英語の予習さ」
「和弥……俺ってどんなやつだ?」
和弥の話を真っ二つに切り相談を持ちかけた。
茶髪にピアスという容姿ながらも、彫りが深く格好良い彼は女子に人気があるらしい。
立てた髪を掻きながら和弥は苦い顔をする。
「人生相談はいいからよ、ノート見せてくんね?」
だが、手を伸ばしてきた和弥からノートを素早く遠ざける。
「雅樹?」
「答えろ」
我ながら呆れるが、ものを頼むのを極力避けてしまうのだ。
和弥は一瞬眉をひそめたが、小学校来の親友はまたかと言うように笑う。
「お前は頭が良くて、運動神経抜群で、Sで陛下で誰にも負ける気がしない、そんな男だよ」
「……陛下ってなんだよ」
「あれ、知らなかった? お前たまに口調が陛下だぞ」
俺は無言で頬杖をつく。
鏡を見ずとも自分の目がどんよりしているのがわかる。
「どしちゃったの?」
和弥が丸い眼で覗き込んでくる。
はたから見たらキスしてるみたいな距離だ。
俺はすぐに馬鹿な想像を退けた。
「フられた?」
「俺が?」
「だって余りに怪しいことゆーから」
(怪しい……? 俺ってそんなに実のない話しかしてこなかったか? 人生相談は似合わないか?)
「俺がって本当にナルシストだな。ほらほら、ノート貸してくれよ」
だが、俺はまたノートを遠ざける。