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色絵
第5章 蕾
先生が想像で描いていたお尻の上に着物を描いてもらうのだ。

「着物の部分だからと気を抜いていませんか?」

「えっ、そんなことは…」

「描き手も描かれる側も気を抜いてはいい作品ができませんよ」

「はい。」

先生は全てお見通しなんだ。軽い気持ちにはなってないけれど、肌が隠れた分、安心していたかもしれない。

筆の音に集中する。

しばらくして休憩の声がかかる。

「もう着物は羽織らないで、そのままこっちへいらっしゃい。」

先生、怒っているの?
ワタシは不安になる。

おずおずとテーブルにつく。

「先生ごめんなさい。」

「いや、寒くないようにと思ったけど、隠れたせいで色が出ていないからね。」

「先生は人物を描くのは嫌いですか?」

「いや、ただ写真のように瞬間で捉えられない分、溢れでる内面を描きたいと思うからね。

初めてポーズをした時と比べると慣れが出てしまったのかな?
こんなこともあるから、肌の部分は一気に仕上げるんですよ。」

先生の視線に気づく、洗濯バサミだけで止まるヒラヒラとしたバスタオルの辺りをジイッと見ていることに…

今、胸元に手を当てるのもわざとらしくて、視線に気づかなかったふりをする。
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