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【SS】目が覚めたら…?
第8章 【2000拍手突破感謝】Ⅱ.執事の憂鬱
「――で、なんで俺の家に?」
俺の目の前には、気落ちした波瑠さんと項垂れたナツがいる。
昼間、ちょっとうとうとベッドで横になっていたら、ふたりが死にそうな顔で俺を覗き込んでいるのに気づいて、はっと飛び起きた。
ここ……俺の家なんだけれど。
姉達が外出中で助かった。
このふたりが家に来たら、絶対姉貴達は裸になりそうだ。
それほど、この兄弟のフェロモンは凄まじい。
「しーちゃんに…追い出されたんだ……」
こないだ俺がネットで仕入れたばかりの、ウサギの着ぐるみパジャマで、体育座りのナツがしくしく泣いている。長く垂れ下がった耳が、どうしてもナツの悲嘆の様を増大させて、哀れみを誘う。
これが"ウサ耳マジック"と言う奴か。
「仕事が終わって帰ってきた俺も、ナツと一緒に追い出された……」
胡座組んで座る波瑠さんは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。
彼の吸うタバコは、俺が見ているだけでも3箱目。
……言わない方がいいな、医者の不養生…いやヘビースモーカーは昔からだし、それより…俺はタバコが嫌いで、実は俺の部屋は禁煙だってこと。
きっと今のイライラしてる波瑠さんからタバコとったら、そこらへんのものに噛みつきそうだ。さらに野生化して暴れるキングコングになったら、俺は止められる自信はない。
ここは、波瑠さんがナツと遊びに来てくれただけで嬉しいと思おう。
だけど――。
ナツの愛らしい着ぐるみ姿でもあのひとの心は絆されないのか。
オンナはこういうものに弱い生き物ではなかったのか?
データ統計上はそうであるのに、あのひとは例外らしい。
逆に怒りを炎上させたというのなら、あのひとはやはり普通感覚が通じない、いつも予想外のところにハイテンションを突き抜ける強豪だ。
この兄弟を追い出すくらいの怒りって、どんなもんだ?
佐伯家の居候が、佐伯家の住人追い出すってなんだよ。
あんたの家は隣だろう?
ツッコミたいが、本人はいない。