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【SS】目が覚めたら…?
第18章 ハルへのエイプリルフール
 
 


 今日は4月1日、エイプリルフール。

 1年に1回、大嘘が許される日だ。



 思い返せば、毎年エイプリルフールには、ハル兄に騙された。



 苦い思い出のひとつとしては――。



――いいか、エイプリル(=4月)は春、つまり俺様の月だ。その最初の日、俺様は無敵になる。


 いつもいつも無敵にふんぞり返っているくせに、小学校に入ったばかりのその時は、ハル兄がとても凄いひとに思えた。よくわからない蘊蓄をたれられると、内容はわからなくてもありがたい気分になってしまう、それと同じようなもの。

 理屈っぽく言われると、ああそうなのかとあたしは素直に信じた。


――シズだけに教えてやる。実は俺様は正義の味方で、これから悪者を倒しに行かねばならない。


 ……今思えば、これ以上ないほど悪者面と悪者行為をしているくせに、正義の味方とはこれいかに。かなり中二病よろしくのありきたりの台詞がその時のあたしの心にずんときたのは、当時夢中に見ていたライダーもののせいだ。


――これを腰に巻いて、両手で2の字を描くと、俺は変身する。


 見せてくれたのは、ライダーの変身ベルト。

 ……今思えば、玩具店にも埃をかぶっているような粗悪品もいいところで、賢いお子様ならへんと鼻を鳴らして横を通り過ぎそうな"それ"は、あたしの目の前で魔法のグッズのようにピカピカ光って見えて、思わず「ほぇぇぇぇぇ」と奇妙な感嘆の声を漏らしてしまったほどだ。


 ハル兄も実は正義の味方に変身して、奇声を上げる雑魚共を蹴散らして、秘密組織に属する悪者をやっつけるのだと思ったら、あたしはぞくぞくしてハル兄に抱きついた。

 この感動は、きっと体でしか伝えられないと思ったからだ。


――よしよし、この手はつかえるな。……いや、こちらの話。実は、悪者退治の前に俺様からお前に頼みがある。


 妙に嬉しそうなハル兄に気づかずして。

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