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【SS】目が覚めたら…?
第18章 ハルへのエイプリルフール
そして――。
たとえばお風呂での背中流し(あたしも全裸になろうとしたら、破廉恥だとハル兄に止められた)、
たとえば風呂後の肩もみ(前から抱きつくように肩を揉もうとしたら、俺様の息子との挨拶はまだ早いと後ろに回された)、
たとえばプリンのあーん(あたしも食べようとしたら、間接はやばいだろうと言われて全部食べられた)。
いつ悪者を退治にいくのかわからなかったけれど、応援の意味を込めて、とにかく尽くしに尽くすように命じられ、そして正義の味方があたしのお膝に妙に整った顔をつけ、あたし史上トップ3に入るほどびくびくの耳かきが終わった後に、気持ちよさそうにすやすやお眠りになった頃。
夜中、8時過ぎ――。
はて、夜中に悪者退治は、あの奇声連中が出て来たら傍迷惑なんじゃないかとか。他人様に迷惑をかけない場所で戦うのなら、懐中電灯を用意してあげた方がいいんじゃないかとか、とにかく色々と考えながらも、こくりこくりと寝てしまっていた時。
うちの両親がハル兄の両親とのお出かけからまだ帰らぬ家の中、あたし達が居る居間の窓がガタガタと不穏な音を響かせ、あたしは目を開けた。
窓に映るは黄色く丸い月。
その光に照らされて見える人影――。
明らかに胡散臭く笑うおじさんが窓に映ったと思うと、鍵のかかっていなかった窓を開けた。
パニクったあたしは、目に入ったライダーベルトを腰につけて、一生懸命両手で2の字を描いたが、変身できない。
おかしい。ハル兄に本物を伝授して貰い、お前は筋があると誉められ後継者に考えてやるとまで言われた、変身"2の字"が通用しない。
――ハル兄、ハル兄!! 変身して助けて、ハル兄!!
本家本元へのSOS。体を揺さぶって泣き騒げば、ハル兄が突如くわっと目を開けてすくりと立ち上がった。
その立ち姿は、格好よくて。
ハル兄は、手を横に振り上げた。
ハル兄が、変身するんだ――。
わくわくするあたしは、ハル兄が変身ベルトをつけていないことに気づき、自分がつけているのを取って慌てて後ろからハル兄の腰につけようとした時。
――俺様のいちゃいちゃタイムを邪魔するな、ド阿呆が!!
なぜか片手を振り上げたままで、足でおじさんを蹴り飛ばした。