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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)

「ええと、初めまして、サクラ。私は白雪と申します」
わざと口にしたのは、"通称"。
彼が誰だかわからない。
そしてあたしは、追われる身だ。
そのリスクを考えていても、あたしはその忘れかけていた本名を口にされたことで、あたしが知らない同じ名のシズルの身代わりに見られたことが、プライドを傷つけられた気がして。
小さなプライドを護るために、白雪の名を口にした。
自分は別人なのだと線を引こうとした。
だが――。
「えええ!? あなたは、シズル姫――っ!?」
「え……?」
「なんで、なんで白雪姫が、シズル姫がここに――っ!!」
彼は知っていた。
あたしがシズルという名の白雪だということに。
父や母も呼ばなくなった、あたしですらもう忘れそうになっているその名前を、埋もれていた闇の中から掘り起こす。
―――姫、待っていて……必ず会いに行くから……。
声が響く。
優しげなあの声、まさか……?
彼は、歓喜に満ちた顔を照れたように赤らめた。
「よかった……っ、あなたに会えて……」
ねぇ、その柔らかな優しい口調が、あたしの王子様とだぶるのは気のせい? ねぇ、あたしにそんなに愛おしいという視線と声を向けないで。
「姫、ご無事でなにより」
彼はあたしの前で片膝をつくとあたしの手を取り、手の甲に唇を落とした。まるであたしの騎士のように。
「あなたが城からいなくなったと聞いて、いてもたってもいられず。心配で毎日生きた心地がしませんでした。姫、姫。俺は――っ」
見上げられる神秘的な黒い瞳に吸い込まれそうになる。
滾る熱にとりまかれそうになる。
ねぇ、あなたは誰?
どうして初めて会うあたしに、そこまで懐かしそうな愛おしそうな顔をするの?

