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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
やがて――。
「そんなはず、ないか」
彼は切なげな顔をして少し俯くと、大きなため息をひとつついて自嘲気に笑った。
「あのひとがここにいるはずがない。会いたいと願う俺の心が、幻を生み出したんだ」
彼が会いたい誰かに、あたしは似ていたのだろうか。
その柔らかくも心苦しくなる声音に、胸が絞られそうになる。
そんな表情にさせるほど、会いたい人がいるんだ?
初めて会った彼に、特別な存在が居るということが胸をもやもやさせる。
久しぶりに、等身大の"ひと"に会った気安さからなのか、それが誰なのか無性に気になってしまう。
美しい彼が求めるのは、どれほど美しいひとなのだろう。
外貌だけではなく、心根も美しい女性に違いない。
そんな女性に一瞬でもあたしと似ていると思われたことに喜べばいいのか、それとも落胆されたことを悲しめばいいのか。
とにかく彼が求めるのは、あたしではないという事実――。
その時だったんだ、彼が漏らした言葉。
「まさか、シズルさんがここにいるなど……」
それは、過去になりつつあるあたしの本名だった。
どきっ。
なんであたしの名前を知っているの?
心臓が勢い良く跳ね上がって、顔がぼっと上気する。
あたし!?
彼が会いたがっているのは、あたしなの!?
それとも偶然同じ名前なだけ?
だからあたしは――。