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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
「お母様の追手!?」
あたしは途端に現実に返り、緊張に裏返った声を出すと、彼を両手でどんと突き飛ばす。
「ちっ!! 違う俺は……」
よろけたはずなのに、走り出すあたしより先に動ける彼は、あたしの腕を掴んで言った。
「俺はあなたを助けたい!!」
一瞬――。
惹かれたのはその黒い瞳。
暗澹たる闇色なのに、なにか強い光がちらつくその瞳。
彼を覆っている黒い氷の壁の奥で、彼を焦がし尽くすかのような強い炎を揺らめかせているのに気づいたあたしは、その矛盾を見せつける彼に戸惑った。
そんなあたしを見透かすかのように、炎を孕んだその瞳が、身動き出来ずに固まるあたしを射抜く。
「俺を信じて」
どくり、とあたしの胸の奥が鳴った。
まるでこれからなにかの幕が開くかのような、期待と不安を半々に織り交ぜたような…、そんなドキドキ感を伴いながら。
「王女を追え――っ」
どこかで声が聞こえる。
このままではあたしは捕まってしまう。
逃げられる方法はただひとつ。
「どうか俺の手をとって」
この男が助けてくれるという可能性に縋るだけ。
だからあたしは、
「あなたを信じる」
差し出された…男にしては綺麗なその手をとったんだ。
……初めて会った、男の手を。