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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
男は、迷路状の庭園に足を踏み入れると、ある垣根に手に入れ、ぐりんとその手を回した。すると、道を塞いでいた垣根が横に動き、新たな道が現れる。
それは驚くべきことだと思うのに、逆に感じたのは――。
「大丈夫。もうあなたを怖がらせる相手はいません」
――恐怖。
未知なるものへの不安からでたものではなく、明らかにこの先に進むことに自分が拒否反応を示している。その理由を知っている。
――……雪や。さあ、私の膝に……。
聞こえてくるのはお父様の声?
「今度は俺が守ります。……の代わりに」
男の言葉の最後は聞き取り無かったけれど、不自然に込み上げる恐怖を、この男の澄んだ声が払拭してくれる。
ああ、おかしいよ。
会ったばかりで、なにひとつ信用出来る要素はないというのに。
城外に出ず、生延びる為に選んだこの男の手――。
今差し出されている同じ手は、少し前よりもとても心強く思える。信用出来るように思える。
だけどあたしは、なけなしのプライドで、今度はこの男の手を取らなかった。素性も知らない男に、今以上の心を預けられない。あたしはそこまで単純には出来ていない。
そう思うのは、きっと――、
――姫、待っていてくれ、必ず会いに行くから……
顔もわからない、あの"彼"への義理なんだろう……。
「大丈夫よ、実の母親に狙われている身の上、それ以上の恐怖なんて、あたし耐えてみせるもの」
だが簡単にその手を振り払えないあたしは、誤魔化すように笑って、その手をやんわりと拒んだ。
それだけで聡い男は、あたしの拒絶をわかったようだ。
一瞬――。
哀しそうな顔をして唇を噛みしめると、出したその手を丸めた。
そして見せた笑顔は、
「それは頼もしい」
どこか顔に貼り付いたような不自然なもので。
思わず息を飲むあたしに気づいているだろうに、何事も無かったかのように背を向けて先頭を歩き出した。