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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
やるせなさそうな声音を漏らした唇は、返事をしないで狼狽するあたしを前に、一度きゅっと固く引き結ばれた。
「……あなたを守りたいんです。城を出るまででいい。無条件に俺を……信じて下さい。この城の中で、俺だけがあなたを守る味方なのだと、俺を……信用して下さい」
なんでこんな懇願のような表情と声音を向けるのだろう。
どうして、あたしが返事をしないだけで、こんなに必死になるのだろう。
……どうして、あたしの心臓はこんなにけたたましく跳ねるのか。
「俺は最後まであなたを悲しませない。……俺を信じて」
絞り出すような悲痛な声音を響かせる哀願に、あたしの心はぐらぐらと大きく揺れた。
彼を信じてみたいと思った。……だけど、言い出せない。言葉が喉の奥から出て来ない。
「……っ」
「信じて下さい」
麦の穂のように垂れる男の頭。
同調するようにあたしはこくりと……、項垂れるように頷いた。
「ありがとうございます!!」
そんな返事だったというのに、悟ったらしい男が上げた顔は、歓喜に綻んでいた。
「今はそれで十分。ですがすぐにあなたの絶大な信用を得られるように精進致します。あ、俺のことは、サクラとお呼び下さい、我が姫君」
依然、燃えるような黒い瞳をしたまま、男が見せた笑顔は、蕾がふわりと花開いたような極上のもの――。
あまりにも眩しすぎる素敵な笑みに魅惑され、胸が締め付けられる心地がしたあたしは、浅く不規則な息を繰り返しながら思わずドレスを手でぎゅっと握りしめた。
"我が姫君"
呼ばれるのは初めてではないのに、胸の奥が激しく疼く。素直な嬉しさに、顔がにやけてしまう。
そんな状態で、ずっとこちらを見ている男を直視出来なくて。
「わ、わかったわ、サクラ」
ああ、だからもうやめてよ。
なんで笑うの、なんでそんなに嬉しそうにするの!!
サクラの笑顔があたしを惑わせる。
「ああ……可愛いな、昔と変らず…。いじめたくなる…。……のように」
だから呟かれた声を拾えず。
「では。お着替えと湯浴み以外は、これより俺がすべてお世話致します。よろしくお願い致します」
は?
「お、お世話!?」
あたしは思わず声を上げてしまった。