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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

「少し帰りが遅く……」
「いや」
あたしはサクラの服の裾を掴んだ。
掴んだが間にブランコがあるために、距離がゼロにならない。
「行かないでよ。"あのこと"、なかったことにしないで!!」
「なんのこと……」
「しらばっくれないでよ!!」
あたしは後ろからサクラに抱きつくようにして、ぐいと後ろに引き寄せるようにして再びブランコに載せた。その上に抱きつく。
あたしの身体に、サクラの感触がようやく感じられた。
泣きたくなるほどに切ない。
そして――。
泣きたくなるほど、この温もりが愛おしい。
「モモちゃん……、行かないで」
サクラの匂いが薔薇の匂いと混ざり合い、くらくらする。
この熱が欲しい……。
欲しいよ、シズルって呼んでよ…。
「およしなさい、姫」
「なんで冷たくするの? あなたモモちゃんなんでしょう?」
「……姫、怒りますよ」
「あたしだって怒るわ!!」
ぎゅうっとさらにサクラの身体に回していた手に力を込める。
「姫」
「シズルよ」
「姫です」
哀しい。
なにひとつ、今朝のことは引き摺ろうとしてくれない。
狼狽すら見えない。
サクラがついた大きなため息に、あたしの鼻の奥がつんとなった。
「あなたのためです」
そう言いながら、サクラはあたしの手に自分の手を重ねた。
「なんで?」
それだけで息が苦しくなってくる。
触ってくれたのが嬉しい。
しかし――。
「たった一度のことで、特別だと思われたくないんで」
サクラから吐かれた毒は容赦なく、その毒はあたしの体内に回り、あたしの心を抉った。

