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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)

「……俺がなにか?」
あたしはこんなに赤くなってドキドキしているのに、サクラの表情がいつもとなにひとつ変らない。
メガネの奥にあるその目は、あたしに愛撫した時のような燃えるような要素はなにもなく、あたしを女として見つめていた濡れた瞳もない。
逆に、さらに距離があいた気がする。
あたし達の間にあるブランコが、障壁のようにかなり大きく感じた。
「あ、あの……浴室から運んでくれたの、あなたよね?」
わざと、あの秘め事があったことを切り出して。今までのふたりではないのだと訴える。
空気を昨日みたいな、特別な……親密で濃密なものにしたかった。
「そうよね、モモちゃん?」
あたし達は幼馴染みなんだ。元々知らない仲ではなかったのだし。
そう、今日からなにかが変わる――。
だが。
「俺はサクラです」
返ったのは、仮面を被ったかのような無表情。
他人よりも他人の……その突き放したような顔に驚いて、思わず目を見開いたあたしに、メガネをくいくいと指で動かし、上から目線の冷たい視線を寄越してくる。
「え、でも……、浴室であなたが自ら……」
「夢でも見られたんじゃないですか、姫。昨夜は早くからお部屋で眠られ、今の今までずっと眠り込んでいたんです。俺も部屋から出ずに寝ていましたし」
「え……?」
"夢でも見られたんじゃないですか"
嘘だ。
夢じゃない。
そんなはずはない。
「私は先に食事をすませていただきました。ちょっとこれから人に会わねばならないので、出かけてきます」
「出かける……?」
今までそんなことはなかった。
あたしを守るためだと、だから同居をしていたはずなのに。
……嫌になったの?
あたしが、はしたない姿を見せたから?
あなたが、はしたない姿を見られたから?

