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【SS】目が覚めたら…?
第6章 【2000拍手突破感謝】Ⅰ.帝王の憂鬱
 

 

 俺が休みの日――。

 さすがの俺も連日の徹夜の仕事で疲労し、昼近くまで寝入ってしまった。


 目覚めた俺が、欠伸をしながらリビングに行くと、ナツひとりソファに座ってため息をついている。


 ああ、そういえば親は昨日から温泉旅行だったか。

 シズが見当たらないが、部屋にいるのだろうか。


「おはようさん。ナツ、どうした?」


 俺が現われたのも知らない様子で、神妙な顔つきをして考え込んでいるナツに声をかけたら、ナツは思い詰めていた顔を笑顔に変えた。


「あ、波瑠兄おはよう。連日お仕事お疲れ様」


 どんな状態であってもきちんと俺を労(ねぎら)う挨拶を、笑顔でしてくるのはさすがだと思う。このナツの笑顔で、俺はどれだけ癒やされてきたか。


 そのナツが、一気に顔を曇らせて俺に聞いた。


「波瑠兄、Seasonっていうアイドルユニット、知ってる?」

「Season? 知らねぇが、そういえば……最近、看護師や患者達がやたらその単語を連呼して騒いでいたような。Seasonというくらいだ、もしやそれは……」

「そう、4人組の20代のイケメン達で、Haru、Natsu、Aki、Fuyuっていう芸名らしいんだ」


 ナツの頬が不満そうに膨らんでいる。


「著作権の侵害だよね。僕達の方が先に本名として使っているのに、後から出てきた偽者が、ハルだのナツだのきゃーきゃー言われるなんて」


 俺は、ピンときた。


「まさか、シズ……」

「そうなんだよ。しーちゃんが、それにはまっちゃって、最近お部屋から出て来ない。うっとりした顔で、『ハルー』とか叫んでいるんだ。しーちゃん、SeasonのHaruが好きなんだって」


 俺の眉間に皺が深く刻まれていく。


 "ハル"


 ……シズは、俺に抱かれた時にしか、俺のことを名前で呼ばない。

 しかも感じまくって理性が薄れてきた時に何度もせかして、ようやく俺を兄貴ではなく、ひとりのオトコとして呼ぶ。


 自発的に呼ばせたいのに、いまだそこまでには至らねぇ。
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