この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【SS】目が覚めたら…?
第6章 【2000拍手突破感謝】Ⅰ.帝王の憂鬱
俺が休みの日――。
さすがの俺も連日の徹夜の仕事で疲労し、昼近くまで寝入ってしまった。
目覚めた俺が、欠伸をしながらリビングに行くと、ナツひとりソファに座ってため息をついている。
ああ、そういえば親は昨日から温泉旅行だったか。
シズが見当たらないが、部屋にいるのだろうか。
「おはようさん。ナツ、どうした?」
俺が現われたのも知らない様子で、神妙な顔つきをして考え込んでいるナツに声をかけたら、ナツは思い詰めていた顔を笑顔に変えた。
「あ、波瑠兄おはよう。連日お仕事お疲れ様」
どんな状態であってもきちんと俺を労(ねぎら)う挨拶を、笑顔でしてくるのはさすがだと思う。このナツの笑顔で、俺はどれだけ癒やされてきたか。
そのナツが、一気に顔を曇らせて俺に聞いた。
「波瑠兄、Seasonっていうアイドルユニット、知ってる?」
「Season? 知らねぇが、そういえば……最近、看護師や患者達がやたらその単語を連呼して騒いでいたような。Seasonというくらいだ、もしやそれは……」
「そう、4人組の20代のイケメン達で、Haru、Natsu、Aki、Fuyuっていう芸名らしいんだ」
ナツの頬が不満そうに膨らんでいる。
「著作権の侵害だよね。僕達の方が先に本名として使っているのに、後から出てきた偽者が、ハルだのナツだのきゃーきゃー言われるなんて」
俺は、ピンときた。
「まさか、シズ……」
「そうなんだよ。しーちゃんが、それにはまっちゃって、最近お部屋から出て来ない。うっとりした顔で、『ハルー』とか叫んでいるんだ。しーちゃん、SeasonのHaruが好きなんだって」
俺の眉間に皺が深く刻まれていく。
"ハル"
……シズは、俺に抱かれた時にしか、俺のことを名前で呼ばない。
しかも感じまくって理性が薄れてきた時に何度もせかして、ようやく俺を兄貴ではなく、ひとりのオトコとして呼ぶ。
自発的に呼ばせたいのに、いまだそこまでには至らねぇ。