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カヤグムタリョン
第1章 大韓館の名妓ーミョヒャンの過去
李氏朝鮮時代随一の検番、大韓館の朝は早い。
起床を知らせる太鼓の音が鳴ると同時に、皆起きて身支度を整える。
そして、舞やカヤグム、パンソリの稽古が終わった夕方からはお座敷に出るのだ。
年季があけるまで、これを延々と繰り返す毎日ー、
たくさんのキーセンのなかで、ひときわ目立つカヤグムの名手ーミョヒャンも例外ではない。
ミョヒャンはもともと、都から遠く離れた北の地で生まれた。
貴族としての何不自由ない暮らし、優しい婚約者ー。
しかし、その幸せは一瞬で崩れた。
父と婚約者が謀反に加担したという濡れ衣を着せられ、処刑されてしまったのだ。
一家は散り散りになってしまい、ミョヒャンは元の名前を捨てた。
キーセンになり、大韓館に連れてこられたあのときからー。
もとは女官だったといわれる女主人のパク ソソンと会ったときに聞かれたことはただ一つー。
芸とそれ以外、どちらを売るかー。
ミョヒャンは即答で芸だと答えた。
カヤグムの名手として名を馳せるのに、時間はかからなかった。
ただ、キーセンらしからぬところがただ一つあると、ミョヒャンの指名した両班らは口々に噂する。
どれだけ金子を積んでも、夜をともにはしない女。
並みの女ならば、高価な簪や衣服を与えれば喜んで夜を共にするのにー。
いつしか、両班のお大尽の間で難攻不落の女だと噂されるようになった。


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