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衝動[完]
第5章 思い
「好き……なのっ……。」
ゆっくりと目を開け、熱のせいで充血した空ろな瞳で祐を見つめる。
祐は弥生を宥めるように、その頭を撫でる。
「わかったから……少し眠りなさい。」
「お願い……嫌いにならないで……。」
「―――っ……。」
祐の手が止まる。
「祐せんせ……お願いっ……。」
ポロポロと止め処なく流れる涙を拭う力も無いくせに、弥生は必死で言葉を紡ぐ。
「もう……仕事の邪魔……しないから……だから……。」
「邪魔だなんて思ってないから。」
「せんせ……お願い……。」
祐は弥生の手を握る。
その手は火傷しそうな程熱かった。
「嫌いになんかならないから……オレは……お前のことが好きだから。」
「ほんと……?」
「ああ……。」
祐は弥生の額にそっと口付けを落とした。
弥生はフッと身体の力を抜いて、安心したように目を閉じた。
祐は弥生を何度か撫でると、静かに立ち上がり、部屋を出た―――。
後ろ手にドアを閉め、大きな溜息を吐く。
「すみません……先生……。」
アナタの大切なあの子にこんな想いを抱いてしまったオレを、どうか許して下さい―――。
その夜、祐は弥生の眠るベッドの横に布団を敷いて、弥生の様子を伺いながら横になっていた。
夜中に目を覚ました弥生は、解熱剤が効き熱は下がったがやはり大量の汗をかいていたので、祐は弥生の家から持って来た服に着替えさせ、脱水症予防の為水分だけ取らせた。
弥生はそのまま朝まで眠った。
翌朝、朝食を一緒に摂り、祐はまだ少し熱のある弥生を車で自宅まで送って行った。
「今日は学校休みなさいね。松野先生にはオレから話しておくからちゃんと寝てなさい。いいね?」
祐がそう言うと、弥生は『うん』とだけ答えた。
俯き、何か考えている様子だった。
「弥生。」
車を降りた弥生を呼び止め、自分も車を降りる。