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衝動[完]
第8章 番外編Ⅱ
翌日、弥生は祐のいる保健室へ訪れた。
「祐先生……。」
弥生はドキドキしながら声をかけた。
昨日の祐の様子が、ひどく気になる。
「何?」
自分を振り返り、答えた祐の表情を見て、弥生は顔を引き攣らせた。
「あ……えっと……。」
思わず口篭る。
祐と初めて会った時でさえ、こんな表情はされなかった。
感情の欠片も見せない冷めた瞳。
弥生は震えそうになる声を必死で抑えながら、祐に言う。
「先生、今日は仕事遅い?あ、あの、あのね、もし遅くなかったら、一緒にご飯食べよう?」
祐はその様子をじっと見詰めていたが、やがて足元に視線を落とした。
「あー……あのね、弥生……。」
弥生の心臓が跳ね上がった。
背筋を冷たいものが流れる。
「もう無理だよ……ごめんね?」
祐は小首を傾げてうっすら微笑むと、保健室のドアを開けて出て行ってしまった。
弥生はその場に立ち尽くした。
うそ……。 遅かった……? 遅かったんだ……。
祐先生の『好き』は無くなっちゃった。
私に言う分は終わっちゃったんだ。
弥生は自分だけが取り残されたような感覚に突き落とされた。