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甘いだけの嘘ならいらない
第1章 だから僕はもう戻れない


「理紗?…まだ眠ってるの?」

「ん……起きてる…」

「瞼閉じてるうちは、起きてるって言わないから」


明るい笑い声にゆるやかに押し上げた瞼が柔らかな光を取り込む。
やわらかくてふわふわの琥珀色の髪が額に触れて、きらきらの澄んだ瞳があたしをみつめた。

どちらかといえば可愛らしい、整った容貌をした彼に、真っ直ぐな視線を向けられて、少し低くて凛とした声にどきりとする。


「英士くん…」


まだ醒めきらない頭で、一度名前を呼んだきりずっとみつめていると、困惑したような声が落とされる。


「……どうしたの?」

「あ、ご、ごめんね…っ」

「いや…いいんだけど。見惚れてた?」


ほっぺたを紅くして、ぱっと視線を反らすと、くすりと微笑って、じっとみつめ返してくる彼。
英士くんはあたしの髪を優しく撫でて抱きすくめた。


「まだ寝惚けてるね。昨夜はあんなに大胆だったのに」

「…っ」

「恥ずかしがるその顔も好きだよ」



耳に唇で触れられて、舌が首筋を這う。
きつく吸い上げられて紅く鬱血した痕に、重ねるようにキスが落とされた。


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