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誘淫接続
第4章 切断
 股間に手を伸ばし、自分のクリトリスを指でまさぐってみる。
 うずいているのに――
 濡れはするのに――
 どれだけの時間いじっても――
 いけない。
 いけないのだ。
 絶頂することができないのだ。

 全く感じないわけではない。確かに快感は、ある。
 けれどもまるでそれは積み上げられた薪の内側で、火種がくすぶっているだけのようなものだった。単に火がついているだけに過ぎず、薪全体を勢いよく燃え上がらせはしない。
 全てを燃え尽くす焔が欲しいのに、火種のままそれ以上強くなることはない。

 こんなことは初めてだった。
 『ご主人様』と繋がっていた間は、麻琴はオナニーをすることはなかった。一週間に一、二回責められることで欲情の焔を燃やすことができていたからだ。

 一人でするのが久しぶりだから?
 だから絶頂しないのだろうか?
 麻琴はいら立ちを募らせ、小さな火種のままでいようとする肉芽をまさぐり続け、触り過ぎで痛くなってきてもこねくり回し、夜が明け、十時を過ぎた今も指を動かし続けていた。

    ※  ※  ※

 『ご主人様』からの連絡が途絶えて二週間が過ぎた。

 麻琴は『ご主人様』と知り合ったSNSから、彼のアカウントが消えていることに気づいた。
 麻琴の中に、あきらめの気持ちが芽生えてきた。
 同時に、『ご主人様』とのことがまるで夢であったかのように、それらの記憶があっさりもろく崩れ去っていくようだった。

 他人の目の前で絶頂したことも、バイブを入れたまま職場に行ったことも、屋外で放尿したことも、何もかもが実体験ではなく映画かテレビで観たシーンの記憶でしかないような、そんな感覚になっていた。
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