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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章  『 シフォンケーキ 』


バサバサバサッ。
指先から、本が滑り落ちた。


わたしは、本を拾おうとしたけれど、本を直視することができなかった。


ラムネをこぼしてしまった。
とんでもない本が出てきてしまった。
そして、ここはいとこの部屋……。


落ち着け、わたし!


肩で息をした。
何度も何度も。
少し落ち着いたわたしは、まず本をなんとかしなければ……と思った。


「誰か」が見たのだと、いとこに気づかれてはいけない。


元の位置に戻さないと……。


でも、その前に、ラムネをなんとかしなければ……。


わたしは、ベッドの下を覗きこんだ。
光の届くところには、ラムネは見当たらなかった。


ベッドは、部屋の隅に寄せて置いてある。
あおむけに寝転がって、左側と足元に壁がある。


いとこのベッドは、重厚なベッドではなく、簡単に移動できそうなベッドだった。


わたしは、足元側をずらしてみた。
わたしの力でも、少し隙間が空いた。
わたしは、音を立てないように、また少しずらした。
やっと、わたしの腕が一本入るくらいの隙間になった。
わたしは、大慌てでベッドに乗り、隙間に腕を突っ込んだ。
わたしの指先はざらついた。
きっと埃だろう。
そっと指を動かすと、球体のものが触れた。
わたしは、人差し指と中指で、それを指と指の間に挟んだ。
落とさないように、ゆっくりと腕を引き上げた。
指と指の間には、黄色のラムネ。
わたしは、もう一度、腕を入れようとした。
けれど、そろそろ祖母の家に戻る時間かもしれない。
わたしは、さっきと同じように音を立てないようにしながら、ベッドを元の位置に戻した。


ティッシュで埃まみれの手を拭いて、わたしは本を手にした。


ラムネを探していた時の格好をよく思い出し、なるべく本があったであろうところに本を置いた。


はあ。


ため息がこぼれた。


とりあえず、何事もなかったような……元通りだ。


わたしは、テーブルの上に置いてラムネのケースをポケットに入れ、ティッシュの上に置かれた湿気たラムネを口いっぱいにほおりこんで、


次回は、絶対にゲームをする!


と、心に誓いながら、ラムネを噛み砕いた。


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