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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章 『 シフォンケーキ 』

わたしはいつものように、祖母と一緒にいとこの家に行った。
「ねえ、ラムネ食べながらゲームしてていい?」
「ハルくんの部屋だから、ちらかさないでね。」
祖母にそう言われ、わたしは元気よく
「はーーい。」
と、返事をして、階段を駆け上っていった。
この間は、シューディングゲームだったから、今日は違うのをしようかな。
わたしは、右手にプラスチックのケースに入ったラムネを持ち、左手の掌に出しながら、山積みされているゲームソフトに視線を投げた。
あさっての方向を見ながら、ラムネを出したものだから、ラムネはたくさん出てしまった。
ピンクや黄色に白、いろとりどりのラムネが、絨毯の上へと転がっていった。
まずい、散らかさないように言われているのに。
わたしは、慌てて右手のラムネのケースをテーブルの上に置き、左手を握りしめ、こぼれたラムネを拾い集めた。
いくつかのラムネは、ベッドの下へと入り込みそうだった。
わたしは、右手を伸ばして、転がっていくラムネを拾った。
残り1~2個が、暗闇の中に吸い込まれていく。
わたしは、拾ったラムネをゴミ箱に捨て、左で握りしめて湿気を帯びたラムネをティッシュの上に置いた。
ああ、ゲームどころじゃなくなっちゃった。
わたしは、ベッドの奥に入ったラムネの捜索をしなければならなくなった。
幸い、子どもの腕は、ベッドの隙間にラクに入る。
私は、肩のあたりまでベッドの下へ押し入れた。
腕を大きく動かすと、なにか手に触った。
ラムネではなさそうだった。
わたしは、人差し指と中指でそれを挟み込み、腕をベッドの下から引き抜いた。
わたしの腕が闇の中から、光の中へ戻った瞬間、手にしたものがなにかわかった。
それは、一冊の本。
表紙には、縄で縛られている女性が写っていた……。

