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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子

「あー、もう8時半じゃねぇか」


月曜恒例のチームミーティング。
始まったのは午後の3時だったっつーのに

年度末の決算により、クソ長い時間拘束されて
蓮と一緒に会議室を出ると、窓の外はどっぷりと暗くなっていた。

……やべ、あと30分しかねぇし。


「瀬名、メシ食いにいく?」


エレベーターの前に着いて、ネクタイを緩める蓮。
長い残業に備えて、いつもならこの辺りで腹に入れとくんだけど


「いや、今日は帰る」


蓮の誘いを断って、俺はデスクのあるフロア階数のボタンを押した。
その手で、急いでスーツのポケットから携帯を取り出す。


「帰る? 月曜だぜ?」

「明日から出張。準備してねぇ」

「あぁ、そういやさっき話してたな。
ニューヨークだっけ?」

「先にシアトル。
……って、ゲッ」

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