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唇に媚薬
第10章 狂う程、夢中
……きっと、数週間前までの私だったら
煌めくオーラを放つ鈴木さんに、運命を感じて
壮大な恋愛ストーリーを勝手に妄想していたかもしれない。
でも
スラッと伸びた彼の腕の先、左手の薬指に指輪が見えたし
大体これだけのいい男なら、とっくに売約済だろうし
いい歳した夢見る乙女な私でも
“ 誰かの恋人 ” って時点で対象からは外れるんだ。
だけどね……そうじゃないの。
それ以前の話。
名前を呼ばれて振り返った瞬間、改めて確信した。
周りの男達と圧倒的な差をつけて、同等のカリスマ性を漂わせて
周りの女達のハートの視線を集めて、光り輝いていた2人だったけど
“ お前、いったい何着持ってんだ? ”
……服がいつもと違うことに気付いたのに、褒めないし
相変わらずお前って言うし、口悪いし
でも、その俺様口調さえも
低くてセクシーな声も
私だけを見る、鋭い視線にも
もう、完全にやられてる。
……ねぇ、葵
私ね
もう、貴方だけしか見えていないみたい。