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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ

─── 有頂天。

喜びで気分が舞い上がっている・こと(さま)───


辞書に載っている、その意味の通り
葵が出張中の私を一言で表すなら、まさにそれだ。


思い返せば、学生時代
葵の歴代の彼女達は、それはそれは可愛くて美人な子が多かったけど

本人がケロリと認めているように
彼女に対する独占欲や執着心といった類のものは、傍から見ても一切感じられなかった。


そのくせ、カンや洞察力はハンパなく鋭いから

寂しさの余り、浮気をしたり
葵を想うあまり、気を引こうと様々な罠を仕掛けても

そんな彼女達の思惑に速攻で気付く葵。
冷酷なまでに無視するし、去る者追わずでサヨナラ~……

って、今更葵の評価を下げるつもりはないんだけどね。

何が言いたいかというと
そんな過去を持つ葵が、自ら嫉妬してるって暴露したわけで
私としては天にも昇る気分なわけで、完全に浮かれていたんだ。


……だから



“ ……蘭さん、ごめんなさい。

でも……どうしようもなく、好きなんです…… ”




……忘れていた。


真っ白で、健気に慕う純粋な女心だけは


なぜか見抜けないという、葵の残念すぎる弱点を。


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