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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ

……って

本音は違うんだからね!
私は葵の彼女だって、声を大にして言いたいんだからね!


「………」

「……?」


心の叫びを抑えて、微笑みながら言ったのに
さっきまで真っ赤だった彼女の表情が、明らかに歪んでいる。

……ん?

な、んかマズいこと言った?


「……あの?」

「……そう」

「え?」


別人のように低くなった声。
よく見ると、その小さな肩が震えている。

……ドキッとして
伏せたその顔を覗きこもうとすると……


「瀬名さんが、可哀想」

「………!」

「あんなに嬉しそうだったのに……」


……な、に言ってるの……?

途端に変化した不穏な空気。
ドクドクと鼓動が早くなってくる。


「……さっきの話、瀬名さんは知っているのでしょうか?」

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